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2018.8.12 Posted

Shout it Out 1st ONEMAN TOUR 「嗚呼美しき僕らの日々」 オフィシャルライブレポート

Shout it Out 1st ONEMAN TOUR

「嗚呼美しき僕らの日々」

 

2018.8.10 ツアーファイナル・東京公演

duo MUSIC EXCHANGE

 

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 2018年7月に約1年4ヶ月ぶりの新作『また今夜も眠れない僕らは』をリリースしたShout it Out。彼らが同作を引っ提げて初ワンマンツアー「嗚呼美しき僕らの日々」を回り、そのファイナルが8月10日、渋谷・duo MUSIC EXCHANGEにて行われた。6月に解散を発表した彼らにとって、これがラストライブとなる。

 

 この前日に開催された追加公演でありセミファイナルのマイナビBLITZ赤坂公演とセットリストはほぼ同じ。本編ラストの楽曲とアンコールの楽曲が入れ替わっただけだった。だがそれでも、BLITZとduoはまったく違うライブだった。それはそうだ。この日をもってShout it Outという生き物は呼吸を止めるのだ。観客は最後の勇姿を目に焼き付けようと必死で、場内が暗転した瞬間、すし詰めのフロアに人の波が大きく揺らめいた。その光景は観客一人ひとりの心に宿る感情の揺らぎを投影しているようでもあった。

 

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 4人が音を出すと、観客が天井を突き上げるように拳を高く掲げる。ギターボーカルの山内彰馬がぶっきらぼうに「よろしく」と呼びかけると「道を行け」で最終話の幕を開けた。ステージ上のメンバーの衣装には、それぞれ違う場所に赤い星があしらわれている。セミファイナルでは大きな会場で音を鳴らすことを目いっぱい楽しむメンバーの姿があったが、この日はセミファイナルとは比べ物にならない集中力と緊張感があった。同時にミスも目立つ。間違いなく平常心ではなかった。

 

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 「今年はたまたま平成最後の夏ということで、神様も粋なことをするなと思いました。楽しんでいきましょう」と山内。セミファイナルが感傷を突っぱねるライブなら、このファイナルは感傷も全部飲み込んでパワーにするようだ。アマチュア時代の楽曲「青」から最新作に収録されている「髪を切って」と、新旧織り交ぜたセクション。細川千弘の叩くドラムは山内の歌を焚きつけたり、包み込んだり、時に突き抜けたりと、デッドヒートを繰り広げる。メンバーふたりによるこの一騎打ち感もShout it Outの特徴のひとつだが、この日のそれはこれまで観てきたなかで最も威力が強く、しなやかだ。

 

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 それはサポートメンバーの存在も影響しているだろう。鈴木陸生(ex.赤色のグリッター)は細やかなプレイが光るギタリストで、谷川将太朗(Rocket of the Bulldogs)は爆発力を持ちつつ一音一音を大事に鳴らすベーシスト。なにより両者ともに山内と細川の“友達”だ。鈴木も谷川も、メンバーとは違う観点でこのラストをとても大事にしていることが、立ち姿からも音色からも伝わってくる。このサウンドスケープは、地盤に4人の強固な信頼関係があってこそ成り立つのだ。

 

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 細川はツアーで感じた喜びを語ると、ステージにいるメンバーが全員友達であると話す。彼は「彰馬は遅刻するし、チューニングしないし、全然曲書かないし、運転も搬出搬入もなんもしないし……なんもしないやつだから大っ嫌いなんです。だけど俺はこいつと友達で良かった。こいつとバンドやってるメンバーは俺しかいないから、俺は(このバンドのメンバーであることを)すげえ誇りに思ってます。こいつとバンドできて良かったなと思います」と笑顔で語り、「僕らは最高のツアーを回れています。そして今日がファイナルです。ビシッときめて帰ります」と堂々と宣言する。

 

 山内は細川のその言葉に、特にリアクションは示さなかった。観客にも背を向けていたため、彼がどんな表情をしていたかもわからない。「2年前に去った友達に宛てた歌を、2年前とはまったく違う気持ちで歌います」と言い披露した「これからのこと」も、いまどんな気持ちで歌っているのかを口にすることはなかった。彼の気持ちは推測の域を出ないが、リスナーへのメッセージでもあり、細川のMCに対する返事なのではないかと思っている。アウトロの鈴木のシューゲイザー的なギターがポジティブな感傷性に色を付け、よりエモーショナルに響かせた。山内のエレキ弾き語りからバンドが音を重ねていくブルージーな「ギターと月と缶コーヒー」は、景色が大きくなるにつれて美しさを増していく。山内の孤独から産声を上げたShout it Outの音楽は、いまこうして信頼するバンドマンの友人たちと鳴らされ、その様子を700人の観客がまっすぐ見つめている――このバンドが最後の最後で最も美しい夜に辿り着いた象徴的なシーンだった。

 

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 山内がギターをかき鳴らしながら自分自身もこの世の人間も孤独であるという旨を語り、「また今夜も僕らの真上には眠れない夜が訪れる。俺は夜を切り裂く力も持っていなければ、闇を切り裂く魔法も知らないが、“ひとり”がこれだけ集まれば大丈夫や。またここで朝を待とう」と言い「また今夜も眠れない僕らは」、「アフタースクール」と立て続けに演奏。「そのまま」では山内と谷川がふざけて鈴木の尻を蹴るという微笑ましいシーンもあり、その時の4人はひたすらに、ただただ楽しそうだった。彼らの高揚に触発されたフロアからはダイバーも多数現れる。その光景は山内が喉を嗄らして歌うほどに熱狂的だった。

 

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 本編ラストの「青春のすべて」は間奏後に山内がギターを置き、ハンドマイクでフロアに乗り出しながら歌い出す。この曲の決め台詞と言ってもいい「僕らの春はまだ青い」というラインはファンに歌わせることも多かったが、この日は彼が絶唱。歌い切った彼は最後にフロアへ飛び込んだ。

 

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アンコールでは山内が「これが最後の“とどめ”や」と不敵な笑みを浮かべ、このバンドが最後に生んだ「鳴り止まない」をかつてないほどの剛速球で投げつけた。山内は「さらば美しき僕らの日々」と言い残し、ひとりで先にステージを去る。あとの3人は身体にあるエネルギーを絞り尽くすように音を鳴らしきり、細川は笑顔でピースサインを掲げてステージを後にした。

 

 空っぽのステージに、くるりの「ロックンロール」が響き渡る。フロアからアンコールを求める歓声は鳴り止まない。音楽が鳴り止むと同時に、観客から「鳴り止まない」の大合唱が起こった。だが彼らがステージに戻ってくることはなかった。最後なんだからちゃんとお客さんに言葉で感謝のひとつくらい伝えなさいよ、おまけに最後まで涙を見せずに笑顔で去るなんてかっこつけて大人ぶっちゃってさ。Shout it Outは最後まで“大人になれない”少年たちだった。

 

 そのあともフロアには「鳴り止まない」を熱唱しつづける人、憔悴する人、さめざめと涙を流す人、抱き合いながら号泣する人、粛々と会場を後にする人、様々な姿があった。その間をかきわけて出口へ向かいながら、観客一人ひとりにShout it Outとの物語があること、そしてそのすべてが今日ひとつの最終話を迎えたことを痛いほどに肌で感じた。

 

 最後の最後でふたりは信頼する人々の手を借りながら、Shout it Out史上見たことがないほど、最も美しい状態までバンドを磨き上げた。これだけのものを成し遂げたバンドを終わらせたことを、ふたりはいつか痛烈に後悔すればいい。痛みを乗り越えた先に、新しい世界は待っている。

 

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文 / 沖 さやこ

 

撮影 / 知衿